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明日の地球のために

ホーム > 情報提供・普及啓発 > 平成29年度の事業 > 日本地理学会秋季学術大会、公開シンポジウムに参加しました

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掲載日:2017年10月24日

2017年日本地理学会秋季学術大会、公開シンポジウムに参加しました

今回、日本地理学会が三重大学を会場として開催されました。またその一環で、学会員以外も発表する事が出来る公開シンポジウムとして、県民・市民に向けて「四日市公害訴訟判決45周年公開シンポジウム」が開催されました。ICETTも発表者の1人として参加してきましたので、その模様をお伝えします。

 テーマ:「四日市公害の教訓とアジアの国際環境協力」

 日時:2017年9月30日(土)13:00~17:00

 会場:三重大学人文学部

 チラシ、スケジュール(PDF:470KB)

  四日市公害訴訟判決45周年を記念し、三重大学内外の学識経験者、関係団体の専門家、県民、大学生、高校生等が一同に集まり、四日市公害を忘れないため、各団体の活動紹介や取り組むべき課題について意見交換を行いました。

   公開シンポジウムは、森 智広 四日市市長、九鬼紋七 100年伝統継承倶楽部会長、木室啓治 西日本閉鎖性海域連携推進機構代表理事の挨拶で始まりました。森市長は四日市公害の経験を活かすため設立した「四日市公害と環境未来館」にふれ、中国やベトナムといった産業の発展が著しい国からの来館者も多い同館は、国際協力の面からもが果たす役割は大きく、これからも四日市公害の歴史や環境保全について発信していきたいと語りました。

 地理学会1

  第1部は「四日市公害の過去、現在、未来を考える」と題し、「四日市公害とは」、「四日市公害から何を学ぶのか」を学問の分野から、四日市公害訴訟裁判の原告の立場から、そして、今に伝える博物館や語り部の立場から現在の活動を伝えました。ICETTも地球環境の保全のために行っている活動を紹介し、世界経済の発展と環境保全のバランスが取れるよう環境分野で活躍する企業への支援にも力を入れていることを紹介しました。

 

地理学会6 地理学会7 地理学会3

朴恵淑 三重大学 教授

伊藤達雄 三重大学 名誉教授

生川貴司 四日市公害と環境未来館 館長

 

地理学会4 地理学会5

竹内 望 ICETT専務理事

野田之一 四日市公害語り部・四日市公害訴訟裁判の原告

  

  第2部「アジア諸国の環境問題を考える」では、韓国・中国・モンゴル・ベトナムの環境問題について、取りまとめた情報や現地での活動を通した成果などを各分野の専門家が発表しました。

地理学会7  韓国の大気汚染問題を取り上げた宋苑端 法政大学 非常勤講師は、国内の大気汚染の排出源は全国的には工業地帯であるが、首都圏では排出量全体の54%を占めるディーゼル車の影響が大きいことを報告しました。また東京・ソウル・プサン・上海・北京の日平均のPM2.5のデーターを比較し、日本(東京)・韓国(ソウル・プサン)・中国(上海・北京)の順で多くなっている事や、韓国・中国における大気汚染物質は冬季に多くなるものの日本は夏季が若干高いといった結果も示しました。

 

地理学会8  中国について発表した谷口智雅 三重大学 国際交流センター 特任教授も大気汚染問題を取り上げました。谷口特任教授は天津市内の学校で教育活動を行っている経験を通し、天津市民の環境に対する意識も合わせて報告しました。その一例として、現在はインターネットにより大気の状況が常に配信されており、市民は常に情報に関心を寄せ、6段階の警戒レベルを活用した生活を送っています。また、天津市の教育機関は環境教育にも力をいれており、日本の公害について知っている人も多くいるそうです。意識啓発や環境改善に向けての取り組みが始まっていますが、大気の状況は天候や地域ごとに大きく変化し、非常に高い数値を示す日も多くあることから、引き続き対策が求められているのが現状と伝えました。

 

地理学会8  モンゴルの社会学が専門の森永由紀 明治大学 教授は、モンゴルは計画経済から自由経済に移行し、著しく経済発展している事と、ウランバートル市には移動が容易なゲルで暮らす遊牧民族が集まったゲル街が急増している事を取り上げました。森永教授は、大気汚染の原因の8割がゲルのストーブというデータがあることから、急速な都市への人口集中という社会の変化が、大きな環境問題を引き起こしていると伝えました。

 

 

 

地理学会9  ベトナムではホーチミンから車で約1時間のカンザー地区にてマングローブの植林・保護を研究している安食和宏 三重大学 教授が発表しました。かつてカンザー地区は首都から近い立地ながらマングローブが自生し、豊かな漁場でもありました。しかしベトナム戦争時に枯葉剤が散布され、カンザー地区は壊滅的な被害を受けました。しかし戦争後、政府は集中的に植林を進め、現在では保護区に指定されるとともにエコツアーが行われるまで再生し、シンガポール、韓国、日本から多くの観光客を呼び込んでいる事例を報告しました。

 

  第3部、「四日市公害の教訓とアジアの国際環境協力」では、各専門家と一般の参加者が討論を行いました。今回一般の参加者より「企業や行政府における「人財」育成について、どのように考えているのか、」「四日市公害が各国にどのように影響があったのか?また、人づくりはどのようなものか?」といった質問を受け、各立場から次のような発言がありました。

大学の立場:

文系、理系の学部を横断して学問を融合したり、個別の学問を深める切り離しの両方を進める必要がある。

留学生を例に、帰国後も次の世代の留学生との人同士の繋がりや師弟関係が重要である。

企業の立場:

教えることと伝えることは違うことから、(仕事を)やらせるのではなく、興味や関心を持たせるように、社員には気持ちや感情を大切にする必要がある。自分がどうしたいのかが大切である。 

人づくりとは、トップの仕事であり、後継者作りと考えている。最近の大学生を見て、知能は高く、知識はあるが、知恵を使っていないのではないか。知恵は使えば使うほど良いと思う。

ICETT: ICETTの設立は、四日市公害が原点である。開発途上国に四日市公害の経験や歴史を伝える事で、インドネシア、ベトナム、タイ等の東南アジアの国々の環境保全に貢献していると考えている。

 

  今回、コーディネーターを務めた朴 三重大学 教授は、この機会を捉えて、産官学民が環境保全と経済について認識を共に連携し、野心的にチャレンジし、世間にアピールしていきたいと締めくくりました。 

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