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掲載日:2010年4月1日

微生物製剤を用いたダイオキシンの生物処理システムの技術開発

事業名:京都議定書目標達成産業技術開発促進事業(経済産業省補助事業)

研究開発テーマ:微生物製剤を用いたダイオキシンの生物処理システムの技術開発

本技術開発は、低濃度、広範囲にわたるダイオキシン類汚染土壌及び低濃度のダイオキシン類を含む多量の焼却灰を対象として、機能性複合微生物を含有する微生物製剤と有機廃棄物を添加したコンポスト化処理法を利用して、安全、確実、かつ低コスト・省エネルギー型でダイオキシン類を分解・浄化できる実用的な生物的環境修復プロセス及び装置の開発を目的とする。
ダイオキシン類による土壌汚染は、発生源付近の高濃度、狭範囲の汚染と発生源から離れた、低濃度、広範囲の汚染の二つが想定される。ダイオキシン発生源付近の高濃度、狭範囲の汚染は、溶融法、熱分解法、超臨界抽出法等によるダイオキシン分解・浄化方法が適当と考えられる。一方、低濃度、広範囲のダイオキシン汚染土壌の浄化、修復には経済性及び技術面から本技術に相当する生物的方法が妥当と考えられる。

研究期間:平成15年~平成16年

研究参加企業:三井造船(株)

概要

平成15年度研究成果報告会での評価/質疑応答

山根委員
こういう微生物分解、一種のコンポストでやるわけだが、その場合、湿度をどういうふうに測っているのか?私は水分活性というのが大事ではないかと思う。単なる水分というのではなくて温度も重要な因子だと思うのだが、これは常温でやるのか?

研究参加企業
25℃でやっている。

山根委員
エネルギー的にいえばもちろん常温でやらざるを得ないのだろうけれども、コンポストというのはだいたい少し温度が高いのだが、そういうのを、もう少し何か、いわゆる既存の有機性廃棄物などを加えて、要するに熱を少しずらして、高温でやるというようなことも考えられるのではないかと思う。そういう点、温度と湿度、湿度の場合は水分活性というのをやはり調べた方がいい。

研究参加企業
水分活性については測定している。水分活性とダイオキシン分解能という形でもパラメータをとってやっているが、水分活性の影響はほとんど出ていない。含水率というパラメータを高いところから低いところまでやっておらず、どちらかというと通常のコンポスト化より低い含水率40~50%である。その含水率がダイオキシン分解に、適していると思われる。その含水率の範囲において、水分活性とダイオキシン分解能に相関はないという結果である。温度については、低温付近ではあるが、これからやるところである。ちなみにこのコンポスト系では通常50~60℃まで上がるが、こういう難分解性の有機物を入れた系では、あまり温度上げても効果は上がらない。温度自体も上がらないという傾向が見られる。50~60℃まで上がらないと有機物を入れても仕方ない、という結果である。低温系については今後10℃とかそういうのはやる予定で、スケジュールに組み入れている。

水谷委員
実験室と実際とでは実際の方が濃度が減ったグラフがあったが、その時にこれが拡散しているという前提でいくと、外に飛び散るということはないのか?また、法定基準で数字出ていたが、このような数字は年々厳しくなってくる可能性があるものであるため、半減期の影響を半年といっても法律が変わったら数字が全く変わってしまうのではないか?

研究参加企業
確かに環境基準は厳しくなる方向だと思うが、先ほど説明した汚染土壌自体12,000pg-TEQ/g-soilというかなり高濃度である。1万pgという高濃度だからあれだけ時間がかかっているが、もともと低濃度、数千pg、を想定しているので、能力としては足りていると思う。ただ、もっとダイオキシン分解の半減期を短くしたいというのは当然あると思う。ビーカースケールとベンチスケールの運転比較の件については、攪拌効果が考えられる。汚染土壌にダイオキシンが吸着していて、土壌からのダイオキシンの脱着という効果があり、攪拌をよくできた方がダイオキシン分解が進んだと考えている。ビーカースケールというのは棒状のようなもので攪拌しており、ベンチスケールと比べると、数値的にどれだけ攪拌効果がよくなったかというのを示せないが、攪拌翼の形状が全然違っている。見た目でも混合の状態が違っており、それで、攪拌がベンチスケールでよくなったのが原因ではないかというふうに考察している。

水谷委員
脱着したものが外に出てくるということはないのか?

研究参加企業
ダイオキシンというのは、かなり高沸点化合物であり、疎水性のものもであるから、蒸発して飛ぶということも考えにくいし、土壌に吸着したものがそう簡単には離れるというのは考えづらい。実際、各地に汚染土壌というのがあるが、そこがあまり広がってないというのは、水に溶けずに流出せず汚染土壌そのものにかなり強く吸着してそこに保持されている、ということからも言えるのではないかと思う。

原口委員
汚染土壌の一種のバイオレメデーションだろうが、最終的にはどうするのか?汚染土壌に菌をばらまくのか、それとも汚染土壌を集めてきてバッチ的に処理するのか、どちらの計画か?

研究参加企業
リアクタータイプでやろうと思う。

原口委員
そうすると処理量の問題が出てくるかもしれない。リアクタータイプだと処理能力が相当大きくなければいけないだろう。汚染土壌がどのくらいあるかだが、それで追いつくだろうか?

研究参加企業
実際は場所によっては何千立米あるというから、そういうのを想定しても、コンポスト化法だと大きさ1基当り千立米とかいうのは簡単にスケールアップできるので、対処できると考えている。

古市委員
微生物でより強力なものができる可能性はないか?ダイオキシンが完全に無毒化してしまうということになるのか?

研究参加企業
先ほどグラフで示したが、ダイオキシンは八塩素化から四塩素化まであるが、全てのものが分解されて、どこもその濃度が高くなっているとかピークがあるとかということはないので、全てのダイオキシン類が分解されていると考えており、まさしく無毒化の方向に進んでいる。

古市委員
微生物によって変換されたものは無毒なものなのか?

研究参加企業
分解モデルとしては、新たにダイオキシンより強力な有害物質が出たとか、そういうことは考えられないと思う。八塩素化のものがだんだん四塩素化になり、さらに四塩素化までいったものは、酸化分解されて、無機化というモデルである。毎回、詳細にダイオキシンの組成を分析しているわけではないが、全てのものが押しなべて分解されて新たな有害物質になるというのは認められていない。

徳田委員
微生物製剤というのは微生物なのか、それともただの化学物質なのか?

研究参加企業
微生物の集合体である。

定方委員
土壌というのは非常にpHレベルも違い、重金属等を含んでいる場合もあると思うが、そういった土壌の種類の影響はどうか?

研究参加企業
土壌の性状に違いについて、ダイオキシンの分解に影響は出ている。例えばシルト質と粘土質でいくと、粘土質の方が分解しにくい。

定方委員
どれぐらい違うのか?

研究参加企業
半減期でいうと、例えば粘土質だと80日くらいかかるとすると、シルト質とか砂質になると半分ぐらいになる。粘土質、砂質とでは表面積が極端に違うので、そういう影響が出ているのだと思う。あと、土壌の性状でいくと有機物の量が一番だと思う。

定方委員
pHの影響についてはどうか?

研究参加企業
pHについては、本報告では土壌を用いたのだが、昨年は焼却灰を用いていた。焼却灰というと、排ガス処理にアルカリ等を加えているので、pHが非常に高くなっており、pH11を越える。実際pH11を越えると微生物製剤が働かないので、硫酸を入れてpHを下げるという操作をしているが、そういう荒っぽい操作をしてもダイオキシンは分解された。微生物製剤として機能したということだから、pHについてはあまり影響がないのかもしれない。もう1つは、水系だと極端にpHの影響は出ると思うが、固相系でやっているので、影響は出にくいのではないかと思う。

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