掲載日：2010年4月1日

機能性複合微生物製剤を用いたダイオキシンの生物処理システムの技術開発

事業名:地球環境保全関係産業技術開発促進事業（経済産業省補助事業）

研究開発テーマ:機能性複合微生物製剤を用いたダイオキシンの生物処理システムの技術開発

本技術開発は、低濃度、広範囲にわたるダイオキシン類汚染土壌及び低濃度のダイオキシン類を含む多量の焼却灰を対象として、機能性複合微生物を含有する微生物製剤と有機廃棄物を添加したコンポスト化処理法を利用して、安全、確実、かつ低コストでダイオキシン類を分解・浄化できる実用的な生物的環境修復プロセス及び装置の開発を目的とする。

ダイオキシン類による土壌汚染は、発生源付近の高濃度、狭範囲の汚染と発生源から離れた、低濃度、広範囲の汚染の二つが想定される。ダイオキシン発生源付近の高濃度、狭範囲の汚染は、溶融法、熱分解法、超臨界抽出法等によるダイオキシン分解・浄化方法が適当と考えられる。一方、低濃度、広範囲のダイオキシン汚染土壌の浄化、修復には経済性及び技術面から本技術に相当する生物的方法が妥当と考えられる。

研究期間:平成14年～

研究参加企業:三井造船（株）

概要

• 平成14年度概要.pdf（PDF：112KB）

平成14年度研究成果報告会での評価／質疑応答

小林（達）委員
複合微生物製剤には、最初から優れたダイオキシン分解能力をもっている菌を含んでいるのか？

研究参加企業
特定のダイオキシン分解能を有する微生物を添加したということではない。

小林（達）委員
自然に生物系有機廃棄物と混ぜて得られたものか？

研究参加企業
微生物製剤は、ダイオキシンを含んだ土壌に生物系有機廃棄物（厨芥）を加えてそこで種菌を作った。

小林（達）委員
生物系有機廃棄物が違えば微生物相の種類も種類変わってくるということか？

研究参加企業
恐らく生物系有機廃棄物が違えば微生物製剤の微生物群集構造も変わってくると考えられる。まだいろいろな種類の生物系有機廃棄物を用いて微生物製剤を製造していないので、データ的には不十分である。

小林（達）委員
実際に応用される時には、生物系有機廃棄物は場合場合によって変わってくると思われるが。

研究参加企業
その通りと考える。今のところ、生物系有機廃棄物（厨芥）を用いたダイオキシン分解実験では、ダイオキシン分解能は失われていない。ただ、キノンプロファイル法で見るとドラスティックに変わる部分がある。ダイオキシンを分解する微生物がまだ特定されていないので、ダイオキシンを分解する微生物がキノンプロファイル法より得られる微生物群集構造のどの部分に対応するかがわからないという面はあるが、微生物群集構造は実験の経過日数等により変化する。微生物群集構造とダイオキシン分解能力がどのように対応するかについてはこれから明確にする。

小林（達）委員
ダイオキシンの分解率を出しているが、もっと日数をかける必要があるのではないか？

研究参加企業
日数的な制限もあったので、実験によっては短い日数のものもあるが、もっと長い日数の実験もやっている。

阪井委員
現在、キノンプロファイリングを行っているが、今後、PCR-DGGE（変性剤濃度勾配ゲル電気永動）法を組み合わせてやっていく予定はあるか？

研究参加企業
遺伝子の塩基配列を利用した微生物相の分類手法として、RFLP（環境中微生物から得られるDNAを各種の制限酵素で切断し、その断片をゲル電気泳動で分離、そのパターンを比較することにより微生物群集の構成を解析する方法）法を行っている。今回の報告からは割愛した。

阪井委員
嫌気的あるいは好気的な代謝のどちらで分解されているのか？

研究参加企業
好気、嫌気の両方である。

阪井委員
試された攪拌が5分と55分ということでそれほど差がないと感じたが、もっといろいろな条件でやってはどうか？嫌気であればもっとドラスティックに嫌気にする必要があるのではないか？

研究参加企業
運転サイクルとして、攪拌運転5分、停止55分を12時間行い、あとの12時間は運転を停止して、嫌気の状態を作りだして実施した。

春田委員
分解速度はダイオキシン濃度に依存するということだが、分解速度をダイオキシン濃度で定量的に表すと何次となるか？1次以上の依存性があるということか？定量的な解析をかなり行う必要があると思うが、次数を出したことはあるか？

研究参加企業
まだ、次数を出すところまで行っていない。

春田委員
水の含水率が高い方が速度が大きいということだが、水も反応に関わっているのか？

研究参加企業
水そのものはダイオキシン分解反応に関与していないと考えられる。50％含水時の微生物群集の活動が高いと考えている。